What a hell is goin` on
この一節を直訳すると、
「なんという地獄が続いているのだろうか」
となるのだが、イギリスの俗語では、
「なんてひどい事になってるんだ!」
てな雰囲気になるらしい。
私はこのフレーズを、中学一年生くらいの頃、
ローリング・ストーンズの「ベガーズ・バンケット」
というアルバムに収録されている「Jigsaw - Puzzle」なる曲で知った。
まだ英語を習い始めの時期であり、ストーンズの詞にはとにかく俗語・隠語が多いので、
その正しいニュアンスをつかみ取れるまでにかなり苦吟した覚えがある。
もちろん、こんな英語は学校の試験には出ない。
しかしテストの点数に結びつかなくとも、
こうした
「英語圏の文化ならではの独特の言い回し」
をロックの歌詞で覚えるのは、結構な快感があった。
この感覚はちょっと説明しづらいのだが、
たとえば、
「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺に該当する英語は存在しない。
まず英語圏には桶も桶屋もないし(今の日本にも桶屋はないが)、
この言葉を生む背景となった江戸時代独特の町民感覚、
といった物も彼らには想像しづらいだろう。
しかしここ近年、海外では日本のマンガやアニメが大流行。
数年前まで、日本のマンガは「Japanese Cartoon」と
呼ばれていたが、「Manga(マンガ)」という言葉は、
今日では見事に現代英語の仲間入りを果たした。
(嘘ではありません。英語の辞書にも、ちゃんと「Manga」という項目があります)。
そのあおりで、日本語を学びたいという意思を持つ海外の人々、特に欧米人は急増している
(私の友人のアメリカ人にも一人いる)。
彼らはもちろん、日本語の正確な文法等も学びたいだろうが、
本当に知りたいのは、こうした、諺や常套句に代表される様な、
「日本語を日本語たらしめている文化背景の、その雰囲気全般」
といった物だろう。
何故なら、そっちを感覚的に身につけた方が、
「より良く、日本語作品(それがアニメやマンガであっても)を楽しめる」
からだ。
(ちなみに先日、海外で放送された、
日本語の字幕がついている日本製のアニメを観ていたら、
「よいではないか。よいではないか」というあの時代劇でおなじみの
悪代官的台詞に、「isn`t it good ? isn`t it good ? 」
なる文章が綴られていて、思わず大笑いしてしまった、
という一幕があった。海外の人たちは、果たしてアレでニュアンスが通じるのだろうか・・・・?)
だから、同じような理由で今でも私は、イギリスやアメリカの新人ロック・バンドが登場すると、
その曲の歌詞カードを読むのが好きだ。
そこには、
「教科書や教材にはあんまり載らないであろう、
この時代の空気を感じながら生身で生きている人々」
が使う言葉が存在すると推測できるからだ。
また、そうした言葉たちが生まれて来た文化的背景などに
ついて調べたり、想像したりするのも楽しい。
もちろん、私は専門の言語学者ではないので、
こんなのはほんの「素人のお遊び」に過ぎないのだが。
でも、ロックやポップスで覚えた英語を、そのまんま外人さん相手に使うのも、
ちょっと憚られたりする。
俗によく言われる事だが、言葉は生き物であって、どんな言語も、
時代の趨勢によって少しずつ変化していく。
粋がって、
「生きている英語」を話してるつもりでも、
仮に日本語にするなら、
「んちゃ。今日は天中殺ザンスね。オイラの彼女はかっ飛びの
イケイケギャルでフィーリングはルンルン、気分はクリスタルで
新人類さ。ナウいだろ?え?MK5!」
みたいなどーしょーもなくダサい死後を連発している可能性もあるからだ。
俗語や時代のカルチャーってのはややこしいですな。
画像は、前後の文脈とまるで関係がないですが、
レイヴ・ヒーロー時代のプライマル・スクリーム。
考えてみたら、スコティッシュなんでしたな。ボビー・ギレスビーは。